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「正しい投資」を探すと失敗する ――科学と同じ発想で考える401K(企業型DC)
2026年1月9日
投資の世界では、
「何が正しい投資なのか?」
という問いが、何度も繰り返されます。
しかし実はこの問いそのものが、少しズレているのかもしれません。
科学の世界には「正しさ」は存在しない
科学哲学の世界では、有名な考え方があります。
それを提唱したのが、**カール・ポパー**です。
彼はこう言いました。
科学理論は「正しいから残る」のではない
**「反証されなかったから、暫定的に残る」だけだ
ニュートン力学は長年「正しい」と信じられてきました。
しかし後に、相対性理論や量子力学によって適用範囲が限定されます。
間違いではない。
でも、万能でもなかった。
科学とはつまり、
👉 正解探しではなく、生き残りゲームなのです。
投資もまったく同じ構造をしている
投資の世界でも、状況は変わりません。
• この投資法は正しい
• あの戦略はもう通用しない
こうした断定は、あとから必ず覆されます。
なぜなら市場は、
• 再現できない
• 条件が常に変わる
• 人間の感情が介在する
という、実験条件が固定できない世界だからです。
だから投資において残るのは、
「正しい投資法」ではなく
「まだ否定されていない投資行動」
だけです。
401Kは「正解を当てに行かない」制度
ここで、企業型401K(確定拠出年金)を見てみましょう。
401Kの仕組みを冷静に分解すると、非常に特徴的です。
• 相場を予測させない
• 売買タイミングを競わせない
• 一発逆転を狙わせない
つまり401Kは、
投資の正解を決める制度ではなく
間違えにくい行動だけを残す制度
なのです。
401Kは「反証されていない投資仮説」の集合体
401Kの設計思想は、これまで何度も否定されてきた投資行動を
最初から排除しています。
| 401Kの仕組み | 何を否定してきたか |
|---|---|
| 長期積立 | 短期予測の失敗 |
| 分散投資 | 一点集中の脆さ |
| 定期拠出 | タイミング投資の幻想 |
| 非課税(繰延) | 税制リスクの不確実性 |
| 制度の強制力 | 人間の感情判断 |
どれも共通しているのは、
👉 **「まだ反証されていない行動原理」**であることです。
401Kが残しているのは「理論」ではなく「行動」
多くの投資商品は、
• このファンドが良い
• この運用手法が優秀
という理論の話をします。
しかし401Kが設計しているのは、理論ではありません。
• 毎月積み立てる
• 簡単にやめられない
• 感情で売れない
これは、科学で言えば
実験条件を制度で固定している状態です。
人間がブレることを前提に、
ブレにくい行動だけを残している。
経営者にとっての401Kの本当の価値
401Kは福利厚生でも、節税商品でもありません。
本質は、
「正解を探させない仕組み」を
会社として従業員に提供すること
です。
• 投資教育をしなくても
• 相場観を持たせなくても
• 個人の能力差に依存せず
反証されにくい行動だけが自然に積み上がる
これは、経営者にとって非常に合理的な制度です。
まとめ
投資も科学も、
「正しさ」を証明する世界ではない。
残るのは「まだ否定されていないもの」だけ。
401Kとは、
正しい投資を教える制度ではなく
間違えにくい行動を、仕組みとして実装した制度
です。
だからこそ、
派手さはない。
でも、強い。
経営においても、投資においても、
長く残るものは、たいてい地味なのです。