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「わからなさ」から始める投資の哲学 —— 401Kという引き算の知恵

2025年5月21日

投資というと、「情報を集めて」「勉強して」「予測して」「正解を当てる」ものだと思っていませんか?
でも、世界の経済も、マーケットも、未来も、そもそも完全には理解できないものです。
理解できるフリをして、的外れな予想をしたり、一時の感情で動いて後悔したりするのが、むしろ人間らしい姿かもしれません。
だからこそ、私はこう考えます。
「わからない」という前提に立つことが、いちばん誠実な投資のスタートラインではないか。

■「わからない」を前提にするという選択

未来の株価は誰にも読めません。
プロですら毎回外します。
戦争、災害、政策、テクノロジーの革新…何が起こるかなんて、誰にもわかりません。
それでも投資は必要です。
なぜなら、「お金に働いてもらう仕組み」がなければ、将来の安心を築けないからです。
ではどうするか?
答えはシンプルです。
“わかろうとしすぎないこと”
“判断しすぎないこと”
“時間と分散に身を委ねること”

つまり、引き算の投資哲学です。

■401Kは「わからなさ」に強い仕組み

企業型確定拠出年金(401K)は、まさにこの哲学に基づいています。
• 毎月決まった金額を積み立てる → タイミングを「狙わない」
• 自動的に引き落とされる → 感情に「任せない」
• 複数の資産に分散して投資する → 何が当たるかを「予測しない」
• 長期運用が前提 → 一時の上下に「惑わされない」
これはまさに、「完全に理解できない世界」を前提にしているからこそ、生まれた設計です。

■足すより、引く。コントロールより、信頼。

私たちはつい、「もっと学ばなきゃ」「もっと良い選択をしなきゃ」と思いがちです。
でも、本当に大切なのは、余計なことをしないこと
• 銘柄を絞りすぎない
• タイミングを見極めようとしない
• 他人と比較しない
これらを「引く」ことで、むしろ投資は上手くいく。
不確実な世界に対して、最も強く、しなやかに生きる方法です。

■「わからなさ」を信じる勇気

ボードリヤールという哲学者は言います。
世界はすべて理解できるという思い込みこそが、最大の幻想である
私たちの未来も、経済も、完全に理解することはできません。
だからこそ、自動化された積立という“引き算の仕組み”が、生きてきます。
401Kとは、
わからなさに抗うのではなく、わからなさと共に生きるための、知的な仕組みなのです。

■おわりに

「よくわからないから、投資はやらない」という人がいます。
でもそれは逆です。
「わからないからこそ、401Kのような仕組みを使う」のです。
わからなさを前提にし、手放し、信じる。
その先に、じわじわと効いてくる未来があります。

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